
「あなたのワインに、ちゃんと出会って欲しい」
ご来店は1時間1組(4名様まで)の
予約制とさせていただいております。
Completion of Wine Shop Salut’s Real Store
ワインショップ サリューの実店舗「Wine Shop Salut-Bibliotheque(ワインショップ サリュー・ビブリオテーク)」が完成いたしました。開業から5年という節目に、こうして実店舗というかたちを持てたことに、驚きとともに、支えてくださった皆さまへの感謝の思いがこみ上げます。
柱が立ち、壁がつき、棚が入り、薄暗い光が灯る。 その一工程ごとに、これまでの出会いや言葉、 ワインを通じていただいた数々のご縁が、 この空間の中に静かに積み重なっていくように感じられました。
この場所に名付けた「Salut-Bibliotheque(ワインの書庫)」という名前には、 ここで眠るワインたちが熟成を重ねていくだけでなく、 お客様とともに、この店の時間と記憶が静かに蓄えられていきますように。そんな願いを込めています。
Visits are by appointment only (1 group per hour, up to 4 people)
当店は、1時間につき1組・最大4名様までの完全予約制にてご案内しています。
店主がまだワインを学ぶ前、とある百貨店様のワイン売場で感じたことがあります。
ワインに詳しそうなお客様が店員さんを独占していて、楽しそうに生産者や、産地のお話をされている。
聞きたくても勇気が出ず、値札だけを頼りに選んだワインは、なぜかしっくりこない――
その経験が、この店の原点になっています。話しかけるってとてもパワーのいる作業です。
誰にとっても、ワインとじっくり向き合える場所でありたい。
静かに、自由に、自分のペースで選んでいただくために、1時間に1組という形をとりました。
もちろん。無理にお話しする必要はありません。来店直後の店内利用のご説明以外は、基本お声掛け致しません。店主はネットショップや、新入荷の処理を行っております。気にせずお過ごしください。
ワインの詳細は産地ごとに設置されたQRコードからネットショップに連動しております。商品ごとのタグはございませんが、こちらをご活用ください。
なお、店内はワインのために一年中ひんやりとした空気に保たれています。おそらく、1時間が寒さ的にも限界かもしれません……。
ぜひ、温かいお上着などをご持参いただき、快適にお過ごしください。
photo by 町田益宏
※貸出はモスグリーンのコートのみ
店主の実兄の運営する京都のアパレルブランド『merph』のセラー用コートの貸し出しも行っております。上着を忘れてしまわれた場合はお声かけください。
協力:Sanctum
The Reason We Chose a Quiet Location
サリューの実店舗は、決して人通りの多い場所にはありません。名古屋・栄のテレビ塔から車で18分ほど。アクセスは、お世辞にも便利とは言えない場所です。
それでも、あえてこの静かな土地を選びました。賑やかな立地に店を構えれば、多くの方に立ち寄っていただけるかもしれません。けれどそのぶん、出入りの多さや照明の強さ、空気の変化など、ワインにとっては避けがたいストレスが重なりうる環境かもしれません。
この場所であれば、通年で温度と湿度を安定させ、最小限の刺激のなかで、ワインを丁寧に守ることができる。それが、この場所を選んだ一番の理由です。
To deliver the winemakers’ passion without distortion

サリューには、ワインを生み出すことも、 遠くの畑で生産者と直接関係を築くこともできません。
だからこそ、インポーター様や生産者様の思いを正しく受け止め、崩すことなくお客様へ届けること。 それが自分たちの責任だと考えています。
開けた瞬間、そのワインらしさがきちんとそこにある。
そんな1本を、これからも静かに、真摯に届けていきたい。
ワインを愛するサリューが考える理念です。
建築設計:建築士事務所エクリアーキテクツ 海藤様
その空間は、まるで海外の図書館のよう。ワインが書物のように並び、大地の歴史が静かに語りかけてくるような佇まいを見せてくれます。それはひとえに、海藤氏の感性と確かな技術があってこそのものです。


名古屋市北区の住宅街。一方通行の細い道を進んでいくと、突如として姿を現すのが、この建物です。屋根まで突き抜けるような大胆なエントランスは、まるで日常の中にぽっかりと現れた異世界の入り口のよう。ヨーロッパの裏路地にある、隠された小径を彷彿とさせるこの空間は、まさにワインという世界への「秘密の入り口」です。
店先では、花崗岩が静かにお出迎えいたします。これは、ボジョレーの地層から着想を得たものであり、素材には愛知県・岡崎市で採れる御影石(花崗岩)を使用。土地の記憶とワインの背景が、さりげなく重なるように設計されています。
設計士の海藤様は、打ち合わせのたびに「今日のワイン、選んでもらえますか?」と笑顔で尋ねてくださり、多くのワイン(施工期間内に数十本)を楽しみながら、ご購入いただいた姿がとても印象的でした。建築家であると同時に、一人の心からのワイン愛好家であることが、この場所の空気に深く影響しているのだと感じています。
この場所には、ただ美しさを追求しただけではない、「ワインを愛する者による、ワインのための空間」が息づいています。
ナチュラルワインを扱うオンラインショップが、はじめて実空間を持つことになりました。

その場の設計にあたって、私がまず考えたのは、「売る」ための場というよりも、ワインと人、人と人とが、ゆっくりと関係を育んでいくための場所にすることでした。
エントランスはあえて狭く、縦に深く取っています。
壁に囲まれた静かな通路を進むことで、少しずつ意識が街から離れ、地中に潜るような感覚に切り替わっていく。
その先に、視線を一度折ってからたどり着く無柱の吹き抜け空間があります。
整然と並ぶワインが一望できるように設計しましたが、それは在庫の多さを誇るためではなく、
この場所に宿る時間の厚みや、積み重ねられてきた営みが、そっと伝わるようにと思っています。
吹き抜けの上部には、ヨーロッパの貯蔵室に見られるような、ゆるやかなアーチの天井を設けました。
硬質な構造でありながらも、どこかやわらかく、包まれるような気配が生まれています。
素材や照明には極力過度な演出を避け、温度や湿度を安定させる空調も含め、
ワインが静かに引き立ち、人が自然に身をおけるような空間を目指しました。
中央の大階段は、上下階をつなぐ動線であると同時に、人が佇むことのできる場所です。
椅子ではないものに座るとき、人は少しだけ自由になる気がします。
そのような心の余白が、この場所にあってほしいと思いました。
この建築が、ワインとの出会いを通して、誰かと何かを分かち合えるような、静かな媒介になればと願っています。
https://ecrit.jp/
https://www.instagram.com/hiroshi_kaito
クリエイティヴデザイン:株式会社visknow 広瀬様
音楽も大好きな店主が、若かりし頃、お世話になった名古屋の老舗クラブ『club Buddha』。1986年の創業以来、数々のカルチャーを生み出してきたそのクラブのロゴは、今もなお色褪せることなく、鮮烈な存在感を放ち続けています。
その印象的なロゴを手がけたのが、グラフィックデザイナーの広瀬氏。店主がソムリエ時代に出会い、長年ご縁を大切にしてきた方です。
「いつか自分の店を持てたなら、そのときは必ずお願いしたい」
そう心に決めていた夢が、実店舗の完成というかたちで現実になり、迷うことなく広瀬氏にロゴデザインを依頼させていただきました。
思い入れのあるロゴが、 サリューの顔となってくれたことを、心から嬉しく思っています。
こだわりの生産者が作るナチュラルワインを3000種類以上スト
ックするNatural wine shop Salut。 国内のワイン好きから愛されるこのECサイトのショップが、
より良い状態でワインを保管して、 来店していただけるリアルショップとしてのセラーを建てました。
まるで図書館のような"ワイン{ライブラリー}セラー"は圧巻で壮観です。
最適な状態でワインをストックしてオンラインでもオフラインでもお気に入りの見つけてもらえる。 ベストプライスでお客様に届ける。 というプロジェクトのブランディングに関われて大変光栄に思って います。
このプロジェクトを象徴するようロゴの設計には
1)生産者から消費者へにワインをバトンパスにようにつなげる"想いの継承"
2)ワインがグラスを満たす心がほどける"喜びの景色"
3)『図書館のようなセラー』から本が寄り添うようにワインが人生のに溶け込む"静かな感動"
をテーマとしています。
気になる本を選んで読むようにワインの生まれを知り、いただく。
知ることは自身の心と人生を充足させていきます。
そして生産者から届くワインがテーブルで豊かな時間を作る。
幸福が詰まった新しいSalut。
ミュージシャン:高橋琢哉(Oyster Inc.)様
ワインを選ぶ時間が、お客様だけの、静かで特別な時間であってほしい。
そんな想いから、店内の音楽は、店主の東京時代の友人であり、音楽家の**高橋琢哉(Oyster Inc.)**さんにお願いしました。
大阪・関西万博のとあるパビリオンの音楽を制作した直後、数日でデモを仕上げていただき、店内での実地検証を経て完成となりました。
肌寒い早朝、だれもいない葡萄園を散歩しているような、 雨、川、虫の音といった自然の気配を感じる、即興的な環境音楽です。
店内に響くのは、ボトルの触れ合う音、お客様の足音、空調、そしてこの音楽だけ。
手で触れられるものも触れられないものも、その存在の中の、中の、深いところにある、目には見えない由来や、ひそやかな動機、こころざし、経てきた旅の記憶。そういったものたちが、その存在の「質」と呼ばれるものを形作る。
いま私たちが生きている世界では、そんな混成的で繊細な要素も、外見ばかりツルツルのシュミレーションに代替され、素材の質、作品の質、などという言葉はもはや単なる管理対象かマーケティング用語でしかありません。
そんな世界の中で、Salut が扱うワインやその生産者たちは、どういう「質」を育もうとしているのか。楽曲の依頼の連絡をもらったときに考えたのはそんなことでした。
ちょっとした雰囲気のために不要なBGM など作ることはない。そんなものではなくSalut bibliotheque に音楽をつけるとしたら、私もまたひとりの生産者として、お店を訪れるお客さんとワインたちに寄り添う乗り物のような、音楽と音響でつくる時間と空間の体験を手渡しするようなものが良い。
おおよそ作ったデモ楽曲を持って店舗まで行き、Macbook を直接お店のオーディオシステムにつないで、天井から釣られたlistude のスピーカーから音を鳴らしてみました。世界中どこへ行っても建築や空間には、そこにしかないクセや物語のようなものがあって、実際に曲を鳴らしてみると、東京のスタジオで聴いていたときには思いもしなかった削りたい音、追加したくなるアレンジなどが次々と見えてくる。そうなるといつもの癖でその空間に合わせて楽曲を作り直したくなってしまい、そのまま演奏して編集して2日間。最終的には20 分の曲になりました。
そうやって作った曲です。なので私がこの曲を仕上げたときに最後にモニターしていた音、聴いていた音は、Salut Bibliotheque の店内で鳴っている音です。
静かに並んだ世界各地のワインたちもまた、生まれた土地の空気を瓶の中に少し残して、封をされて運ばれてきました。私の古い友人がワインを取り扱う道へと進み、ついにオープンさせた、彼が思いえがいた夢のような店に。
Salut Bibliotheque、おめでとう。良い旅を!
2025年5月1日 高橋琢哉